代表コラム
代表コラム No.01
どうして「痛み」を感じるのか?

痛みを感じるメカニズムの話
1. 痛みってなに?
 人間には色々な感覚が備わっています。目で見えたものを認識する「視覚」、鼻で匂いを嗅ぎ分ける「嗅覚」、音を聴き取る「聴覚」、口に入れた物の味を判別する「味覚」などの他に、温度を識別する「温・冷覚」、体になにかが触れたことを感じる「触覚」、骨や筋肉がどの位置に在るかを感じる「位置覚」と「平衡感覚」、そして痛みを感じる「痛覚」などがあります。

 これらの感覚は体のすみずみに張りめぐらされた神経のセンサーで一種の電気信号に変わり、脳髄にある中枢神経系で統合して、人間はその時々の状況を知ることが出来ます。

 これらの神経系を「知覚神経系」または「求心神経系」といいます。

 痛覚は、生物が自らの置かれている状態を知るのにとても大切な感覚です。人間も痛みを感じることで体に生じた変化や異常を知り、危険な状態を認識することが出来ます。

 赤ちゃんも生まれるとすぐに痛みを感じるそうです。そして痛みの感覚というのは死ぬまで衰えないようです。それだけ痛みが人間にとって大切な感覚だからでしょう。

 たしかに「腰痛」や「肩こり」など、できればあまり感じたくない感覚ではありますが、身体に生じた不具合を知らせてくれる警告としてとても大切なものなのです。

2. どんな痛みがあるの?
 それでは痛みにはどのような種類があるのでしょうか。
痛みを発生原因別に分類すると大まかに次のように分けられます。

1.侵害受容痛:ちょっと聞きなれない言葉ですが、体を破壊するような機械的な力(牽引や圧迫)、化学変化、熱刺激などにより神経のセンサーが興奮して信号を脳に送り、脳で痛みを感じるものを指します。
侵害受容痛はさらに皮膚や骨・筋膜・靭帯・関節周囲の侵害受容器が興奮して痛みを感じる体性痛と、内臓に分布する侵害受容器が興奮して痛みを感じる内臓痛に分けられます。体性痛は不調部位に限局した痛みなのに対して、内臓痛はより広い範囲に痛みを感じます。内臓痛はまったく違う部位に痛みを感じる関連痛を伴うときがあります。

2. 神経因性疼の痛み:中枢・末梢神経の不調により痛みを感じるものをいいます。
中枢性では椎間板の痛みや脳腫瘍・神経内腫瘍のように中枢神経に機械的な力が加わり、電撃様な痛みなどを感じます。末梢性では坐骨神経の痛みのように、おもに体の歪みにより神経線維が引っ張られ、その神経の走行範囲に痛みやしびれを感じます。
中枢性も末梢性も神経の不調の初期は限局的な神経過敏の傾向にあり、神経の不調が長期にわたると神経細胞の器質的変性から神経鈍麻(感覚がにぶくなること)や、逆にごく弱い刺激でも痛みを感じやすくなるアロディニアなどを伴うときもあります。

3.心因性疼の痛み:神経の痛みなどの症状がみられないのに、痛みを感じる。不安や疲労感、おそれ、いかりなどの精神状態の時は痛みを感じやすくなるようです。
これは脳などの中枢神経系に痛みの感じ方を抑制する機能が存在するのですが、精神的なストレスによりこの機能がうまく働かなくなり、痛みを感じやすくなるようです。

3.熱反応で働く侵害受容器(センサー) 
前述のように、痛みとは主に体の末梢組織に加わった刺激が受容器で電気信号に変換され神経線維を伝わり、脳で痛みとして認知されます。

 痛みを感受する受容器(センサー)である侵害受容器にもいくつかの種類があり、1.強い力に反応する機械侵害受容器、2.熱刺激や中程度の機械刺激などで発生する発痛物質などのいずれにも反応する多重侵害受容器(ポリモダール受容器)に分けられます。

 ここでは熱反応で反応するセンサーの働きをご説明します。
熱反応は人体の組織が損傷したときに、その組織を修復する生体防御反応です。

 五十肩を例にとってみましょう。四足動物から二足動物になった人間は、肩から腕や手を吊り下げている肩関節に常に牽引性の力学的ストレスを加えています。そのストレスによって肩関節周囲組織が損傷すると、その組織から様々なホルモン様の化学物質(発痛物質)が生成され、周囲に放出されます。
それらは不調な組織周囲の血管に作用して、血管の拡張と毛細血管内皮の透過性を亢進することで、組織周囲への組織液の貯留と各種の免疫細胞の集中を促します。
また放散された化学物質は周囲の侵害受容器にも作用して痛みを感じます。

 つまり五十肩の痛み感作の機序は、1.組織が不調→2.局所からの化学物質の放散→3.炎症反応→4.侵害受容器が反応→5.痛みを感じる、というようになります。

 侵害受容器が反応することで、脳では肩関節に痛みがあると認識します。
つまり熱反応は組織の修復を進めるとともに、侵害受容器を刺激させることで、脳にどの部位に損傷が起こったかを認識させています。
もし痛みによる損傷部位の認識が出来ないと、損傷していることに気がつかないので、損傷部位をさらに傷めてしまいます(もともと痛みを感じない先天性無痛症という症状もあります)。

 よく鎮痛薬として使用されているステロイド薬などは、発痛物質のうちプロスタグランジン(PG)の生成を阻害することで、鎮痛作用を起こすのです。

 今回は人がなぜ痛みを感じるのか、痛みの発生原因、そして炎症時に痛みを感じる機序を簡単にご説明いたしました。

レポート日:2006年4月
村尾